2017年の色「グリーナリー」を求めて:映画『モアナと伝説の海』
マスコミ向け試写会で、ディズニーのアニメーション映画最新作『モアナと伝説の海』(3月10日公開)を鑑賞させていただきました。
2017年の色「グリーナリー」とは?
トレンドカラー情報を発信する、米国パントン社は、カラーリサーチの対象として、特に子ども向けの映画を重視しています。本作も、2017年の色「グリーナリー」の表現が重要な役割を担っていました。
ポリネシアの歴史から着想を得た物語
物語の舞台は、神秘的な伝説が息づく南の島と、生命の源である海。ポリネシアの人々は、広大な海を渡り、オセアニアの島々を発見し、盛んに移住や交流を行っていました。しかし、すぐれた航海術を持っていたにも関わらず、今から三千年前、 彼らは突然、海を渡ることをやめてしまいました。そして、今から二千年前、千年の空白を経て、ポリネシアの人々は再び航海に出かけるようになりました。
本作の監督、ジョン・マスカーとロン・クレメンツは、太平洋諸島の歴史の謎にイマジネーションをかき立てられ、16歳の少女モアナの物語をつくりあげました。
気高さを示す、赤とオレンジ
まず、モアナの衣装に注目してみましょう。伝統的なタパ布のトップに、パンダナスのスカート。タパとは、樹皮からつくられた不織布のこと。私たち日本人には、月の中に餅つきをするウサギの姿が見えますが、ポリネシアの人々は、棒で叩いて延ばしタパ布をつくる様子を見るそうです。トップの色は、気高さを示す赤やオレンジを基調にしたプリント柄。貝殻や真珠などの装身具も身につけています。
パンダナスの布も樹皮が原料ですが、細く裂いたものを編んで布に仕上げます。パンダナスの布は丈夫なので、敷物やカヌーの帆にも使われました。
海も登場人物のひとり!?
CGで表現された海は、本作の見どころのひとつ。天候や時の移ろいとともに変化する海の美しさも見事ですが、感情を持ち、モアナに意思を伝える登場人物のような役割も担っています。
物語の鍵を握るテ・フィティ
海がモアナにテ・フィティの心を託したことをきかっけに、モアナの冒険が始まります。心を取り戻したテ・フィティは、生き生きとした「グリーナリー」で彩られます。生命の力、生きる喜びに満ちたテ・フィティは、再び海を渡るようになったポリネシアの人々の心を表していようにも感じられました。
最近、書いた映画のコラムもご覧ください。
=======
■松本英恵について
■連載
■カラー&スタイル監修
■ウェブアンケートにご協力ください。
■連絡先
コラムや取材記事の執筆、カラー診断などコンテンツの監修、研修講師、コンサルティングなどのお仕事を承っております。
ご依頼は、info[at]hanae-labo.comまで。
緋か葡萄色、濃い紅……。
大河ドラマ「おんな城主 直虎」第9回「桶狭間に死す」(3月5日放送)では、亡くなった井伊直盛(直虎の父・杉本哲太)のセリフに、色の名前が出てきました。
井伊家のために出家し、墨染の僧衣をまとうことになった娘・直虎(柴崎コウ)がいつか還俗できる日がやってきたら、辻が花を着せてやりたい、色は緋や葡萄色、濃い紅もいい……と。
辻が花とは
「辻が花」とは、室町時代末期から江戸時代初期の染め物に見られる技法のこと。江戸中期に技法が確立し、普及した「友禅」は、糊で防染し、模様や柄を表現します。「辻が花」は、「絞染め」に代表される縫い締め防染による染めを中心をした技法で、模様が柄を表現しました。安土桃山文化を象徴する色柄のひとつです。
緋色(ひいろ)
平安前期までの緋という色は日本茜で染めた色のことをさしましたが、平安中期以降は鬱金(うこん)などの黄色の下止めに紅花をかける方法が用いられました。
葡萄色(えびいろ)
近代以降、海老にちなむ色名「海老名」「蝦色」と混同されるようになりましたが、戦国時代の「えびいろ」は「葡萄色」という表記が一般的。葡萄色は野生のえびかずらの実で染めた、暗い紫みの赤のことをさしますが、蘇芳(赤)と藍(青)で染めた色であったかもしれません。
紅色(べにいろ)
紅の歴史は古く、奈良時代から化粧料として用いられていました。紅とは、中国から伝来した紅花の花弁の色素から製した染料による色の名のこと。やや紫みがかった鮮やかな赤のことをさします。
松平元康の金色の甲冑
ところで、桶狭間の戦い(1560年)の場面では、松平元康(後の徳川家康)の金色の甲冑がとても目立っていました。他の武将たちと比べると、甲冑の構造やデザインにも大きな違いがあります。
鉄砲戦が大きな役割を担うようになるのは、長篠の戦い(1575年)になってから。桶狭間の戦いの頃は、刀や槍が主な武器なので、甲冑も鉄砲に対する防御はあまり想定していなかったと思われます。
元康の金色の甲冑は、史料として残っているのですが、後世の創作ではないかとも言われています。
最後に拙書の宣伝を。覚えておくと便利な慣用色名と配色例をご紹介した本です。ぜひ、お手にとってご覧ください。
和モヨウ配色手帖〜オシャレな“和モヨウ”でもっと磨く配色レッスンBOOK (美術のじかんシリーズ)
- 作者: 松本英恵,CHIKU,morori,さがわやすこ,せのおりか
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2010/09/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 1回
- この商品を含むブログを見る
=======
■松本英恵について
■連載
■カラー&スタイル監修
■ウェブアンケートにご協力ください。
■連絡先
コラムや取材記事の執筆、カラー診断などコンテンツの監修、研修講師、コンサルティングなどのお仕事を承っております。
ご依頼は、info[at]hanae-labo.comまで。
光のアート@エスパス ルイ・ヴィトン東京
先日、HOYAの青山ビジョンセンターで、新しいメガネをつくりました。
次の予定まで少し時間があったので、エスパス ルイ・ヴィトン東京で、アメリカ人アーティスト、ダン・フレイヴィンの展覧会を見ました。
ダン・フレイヴィンの4原色
バイオグラフィーによると……
ダン・フレイヴィンの作品や活動は、ドナルド・ジャッド、ロバート・モリス、ソル・ルウィットなどと並んで、ミニマルアート、ミニマリスト運動として紹介されます。
フレイヴィンは、表象、錯覚、隠喩(メタファー)を拒絶し、基本形の連続と反復という手法を用いました。素材は、既製品の直管蛍光灯のみ。4種類のサイズ、10種類の色(青・緑・ピンク・黄・赤・紫外線、そして4種類の白)を用いています。
このような作品を制作し続けた背景には、父親の方針で受けた宗教的教育を自ら断ち切るという強い意志があったようです。その一方で、フレイヴィンは、モンドリアンが嫌悪した緑を「他とは異なる驚くべき強さがある」と主張し、ピンク・青・黄と並んで、4つの原色のひとつとして扱っています。
モンドリアンから着想を得た「緑」
色のイメージや連想には、宗教やアートに由来するものもあります。フレイヴィンは、宗教の象徴的な意味合いから色を解き放つ一方で、モンドリアンから着想を得て、緑がもたらす視覚効果を探求しました。フレイヴィンの緑は、モンドリアンに対する“生彩を放つ[colorful]反応”と解釈されているそうです。
エスパス ルイ・ヴィトン東京は外光が入るギャラリーなので、フレイヴィンのような光を用いた作品は、時間や天候によって見え方が違ってきます。光の感覚や空間の体験を楽しみながら、創造のプロセスにも興味をそそられました。次は、日没後に訪れてみたいです。
www.espacelouisvuittontokyo.com
メガネの話はこちらをご覧ください。
=======
■松本英恵について
■連載
■カラー&スタイル監修
■ウェブアンケートにご協力ください。
■連絡先
コラムや取材記事の執筆、カラー診断などコンテンツの監修、研修講師、コンサルティングなどのお仕事を承っております。
ご依頼は、info[at]hanae-labo.comまで。
保存