映画「君の名は。」が教えてくれる、視覚の秘密
前回に引き続き、パントン「カラー・オブ・ザ・イヤー2017」発表イベントに関連して、映画の話を。
アイズマン氏は、リサーチした作品のひとつとして、新海誠監督の「君の名は。」をあげました。
物語の舞台となるのは、東京の都心と山深い田舎町。実在する場所を描いたアニメーション映像の美しさが話題となり、聖地巡礼がブームとなりました。
ありふれた景色が美しく感じられたのは、二人の主人公、瀧と三葉が入れ替わったから。
上図は、セミナーや研修のお仕事で、「色とは?」「視覚とは?」を説明するとき使っているものです。
私たちの視覚は、光の性質、対象物の性質、目の構造、脳の主観的な解釈と密接に関わっています。同じ光の元で、同じものを見ても、見る人によって見え方は異なります。
東京の景色は、瀧の身体に入った三葉が見たもの。田舎町の景色は、三葉の身体に入った瀧が見たもの。憧れや驚きといった感情が、見える世界を変えてしまうこともある……そのような視覚体験が映像化された作品です。
アイズマン氏は、美しいものがヒットすると、消費者の期待値が上がると述べていました。映画「君の名は。」を超える視覚体験を提供することが、色やデザインには求められているのです。
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ミントグリーン:レミニッセンス(追憶)の色
2016年12月15日、東京・渋谷にて開催された「カラー・オブ・ザ・イヤー2017」発表イベントを取材させていただきました。
1995年よりパントン・カラー・インスティテュート・エグゼクティブ・ディレクターを務める、リアトリス・アイズマン氏のプレゼンテーションを拝見し、インタビューさせていただく貴重な機会となりました。詳しくは下記の記事をご覧ください。
記事に書かなかったことで印象に残っているのは、レミニッセンス(追憶)、ヴィンテージカラーといったキーワードで紹介された、ミントグリーンのフォルクスワーゲンのレトロカーを使ったデザイン事例です。
アイズマン氏のプレゼンテーションは撮影禁止だったので、参考になりそうな事例をあげましょう。
映画「ゴッドファーザーⅡ」(1974年公開)に同じようなボディカラーのクルマが登場します。「ゴッドファーザーⅡ」は、1958〜1959年のマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)と1917〜1941年のヴィトー・コルレオーネ(ロバート・デ・ニーロ)を交互に描いた作品です。
2つの異なる時代を描き出すのは、街並み、インテリア、ファッション、そして、クルマです。
ヴィトー・コルレオーネの物語は、ニューヨークが舞台。暗く濁った色彩が、世界恐慌の時代を表しています。
マイケル・コルレオーネの物語は、レイク・タホ、ブルックリン、フロリダ、そして、キューバを舞台に展開します。街並みは異なるけれど、同じようなクルマが走っています。ファッションも時代を示す重要な要素ですが、クルマの色やデザインは、メーカーや車種が限定されるので、より鮮明に時代を映し出すのではないでしょうか。
キューバを訪れたマイケル・コルレオーネは、間一髪でキューバ革命から逃れ、敵対するマフィアにも勝利しますが……。画面を彩るミントグリーンなど、甘く優しいパステルカラーは、マイケル・コルレオーネが失ったものを表しているように感じました。
キューバ革命を機に、米ソの対立は厳しさを増していきます。ミントグリーンは過ぎ去った幸せな日々を懐かしむ色なのかもしれません。
ご興味のある方は、映画をご覧ください。
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※文中の写真は、キューバの街並み。写真AC(http://www.photo-ac.com/)にてダウンロードしました。
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風水や星占いから探る、色のイメージと文化
新年明けましておめでとうございます。
明るく楽しい一年でありますように、本年もよろしくお願いいたします。
さて、新春らしい記事をということで、ラッキーカラーの記事を2つ寄稿しました。
一つは風水、もう一つは占星術。2つの観点から、2017年のラッキーカラーをご紹介しました。
色が与える影響やイメージには、先天的なものと後天的なものがあります。
生後間もない乳児が識別できる色は、赤と黄色のみ。生後6ヶ月を過ぎる頃から、成人と同じような色覚になります。2歳児を対象に、色の好みを調査したところ、男児と女児に色の好みの違いはないことがわかりました。
しかし、成長するにつれて、女の子はピンクを、男の子はブルーを好むようになります。男女の区別や、女の子らしさ、男の子らしさを学んでいくうちに、色の選択や色の好みに影響を与えるのではないか……男女の色の好みの違いは、先天的(本能的)なものではなく、後天的(文化的)なものだと考えられるようになってきました。
古代中国で生まれた風水、ギリシャ神話を深く結びついた西洋占星術は、それぞれ考え方は異なりますが、暦と密接に結びついています。色は時の移ろい、社会の変化、人の成長などを示す象徴のひとつとして重要な役割を担ってきました。
風水や占星術は、現代の科学とは相容れない面もありますが、ひとつの文化として現代の私たちにさまざまな影響を与えています。色が与える影響やイメージを考える上で、さまざまな気づきを与えてくれるのではないでしょうか。